これから投資を始める方も、既に運用している方も「利回り」という言葉をよく耳にすると思います。「利回り」とは投資した金額に対する収益割合を年間で平均した数字になります。
投資をするうえで、商品の透明性や扱っている企業の信用面、商品の特性など様々な判断基準がありますが、一番気になるのは商品に投資することで、どれくらいの利益が見込めるのか、といった点になるでしょう。
今回は、投資判断に大きく影響する「利回り」の種類や計算方法について、以下の順番で説明していきます。
投資商品によって「利回り」を意味する言葉が異なる場合があり、様々な表現があります。「なんだか難しい」「覚えられるかな」と心配している方もいらっしゃると思います。確かに利回りの種類や各計算式を全て覚えようと思うと難しいかもしれませんが、その言葉が基本的にどのような意味なのかだけでも覚えておくと良いでしょう。
今回はわかりやすい不動産投資(賃貸経営)を例として説明していきます。計算方法も同時に解説しますので、これから不動産投資(賃貸経営)を始めようと思っている方や、既に運用している方も実際に当てはめてみてはいかがでしょうか。
まず、不動産投資(賃貸経営)の利回りは大きく分けると、「想定利回り」「表面利回り」「実質利回り」の3つがございますが、その全てが冒頭へ記載した通り、「投資した金額に対する収益割合を年間で平均した数字」を表しています。
主な違いは何を元に利回りを計算しているのか、という点になります。それぞれの計算について具体例を交えて解説しますので、ひとつずつ理解していきましょう。
想定利回りとは、不動産投資(賃貸経営)の対象物件が満室で運用できることを想定(予想)した場合の利回りとなります。
■計算方法
想定利回りは2回に分けて計算します。
1.満室想定年間賃料収入を算出する
2.満室想定年間賃料収入を物件の購入費用で割る
■計算式
満室想定年間賃料収入 = 賃料 × 総戸数 × 12ヶ月
想定利回り = 満室想定年間賃料収入 ÷ 物件の購入費用 × 100
■具体例
実際にマンションを例として計算してみましょう。
物件の購入費用が1億円、一部屋の賃料が5万円、総戸数10戸の場合
1.満室想定年間賃料収入を算出する
賃料5万円 × 総戸数10戸 × 12ヶ月(一年間) = 600万円
今回の場合、満室想定円環賃料収入は600万円となります。
2.満室想定年間賃料収入を物件の購入費用で割る
600万円 ÷ 1億円 × 100 = 6%
この物件の想定利回りは6%となります。
表面利回りとは、現状の入居状況を元にした収入で利回りを計算しています。また、表面利回りとは別名グロス利回りとも言います。
■計算方法
表面利回りは2回に分けて計算します。
1.現状の入居数で年間賃料収入を算出する
2.年間賃料収入を物件の購入費用で割る
■計算式
年間賃料合計収入 = 賃料 × 入居中総戸数 × 12ヶ月
表面利回り = 年間賃料収入 ÷ 物件の購入費用 × 100
■具体例
実際にマンションを例として計算してみましょう。
物件の購入費用が1億円、一部屋の賃料が5万円、総戸数10戸の内、現状入居数が8戸(2戸空室)の場合
1.現状の入居数で年間賃料収入を算出する
賃料5万円 × 入居中8戸 × 12ヶ月 =480 万円
2.年間賃料収入を物件の購入費用で割る
480万円 ÷ 1億円 × 100 = 4.8%
この物件の表面利回りは4.8%となります。
上記の想定利回りと比較すると、表面利回りの方が1.2%低い値となります。このマイナス分の利回りやこれによる損失を「空室損」と呼ぶことがあります。
実質利回りとは、不動産にかかる現在の年間賃料収入から年間支出を引いて算出された年間利益をもとに計算した利回りになります。
不動産を保有するうえで発生する支出には、固定資産税と都市計画税(固都税)・火災保険料・入居者募集費・清掃や警備などの建物管理費・水道光熱費・修繕積立金などがあります。
なお、実質利回りは別名「ネット利回り」や「NOI利回り」といいます。不動産事業のプロの間では、不動産賃貸の年間利益(収入 - 支出で算出)を「Net Operating Income(ネット・オペレーティング・インカム)」と呼んでおり、これをもちいて算出される「利回り」であるためです。
■計算方法
実質利回りは4回に分けて計算します。
1.現状の入居数で年間賃料収入を算出する
2.不動産にかかる年間支出を算出する
3.年間賃料収入から年間支出を引いて年間利益を算出する
4.年間利益を物件の購入費用で割る
■計算式
年間賃料収入 = 賃料 × 入居中総戸数 × 12ヶ月
実質利回り = (年間賃料収入 - 年間支出)÷ 物件の購入費用 × 100
■具体例
実際にマンションを例として計算してみましょう。
物件の購入費用が1億円、一部屋の賃料が5万円、総戸数10戸の内、現状入居数が8戸(2戸空室)、年間支出として固都税10万円、火災保険料5万円、建物管理費45万円の場合
1.現状の入居数で年間賃料収入を算出する
賃料5万円 × 入居中8戸 × 12ヶ月 = 480万円
2.不動産にかかる年間支出を算出する
固都税10万円 + 火災保険料5万円 + 建物管理費45万円 = 60万円
3.年間賃料収入から年間支出を引いて年間利益を算出する
年間賃料収入480万円 - 年間支出60万円 = 420万円
4.年間利益を物件の購入費用で割る
年間利益420万円 ÷ 1億円 × 100 = 4.2%
この物件の実質利回りは4.2%となります。
これまで、「利回り」の計算方法とその必要性についてご説明してきましたが、これから不動産投資(賃貸経営)を始めようと考えている方は、実際に上記の計算を試してみることを強くお勧めします。重要なのは、投資した金額が何年後に利益になるのかを理解すること、必ず計画を立てることです。
不動産販売会社が提示する「利回り」は「想定利回り」や「表面利回り」であることが多いため、そのままの数字で投資判断をすると非常に危険な場合があります。「想定利回り」はあくまでも満室予想の利回りであり、実際の収入を保証するものではありません。また、「表面利回り」は年間支出を無視して算出されるものであるため、「実質利回り」を算出せずに投資判断をすると、思ったよりも実際の利益が少なかった、あるいは利益がなく損失になってしまった、というような失敗につながります。
不動産の購入を検討する場合は、必ず「実質利回り」を算出して、信頼できる不動産販売会社と数年先を見据えた投資計画を立てましょう。